山薬(サンヤク)は、胃腸の働きを整え、体力を回復させる効果が期待されており、多くの漢方薬に配合されています。
滋養強壮作用もあり、疲れやすい方や体力低下が気になる方の健康維持に役立つ生薬です。
今回は、山薬(サンヤク)の特徴や効能について詳しく解説します。
山薬(サンヤク)とは滋養強壮作用があり、胃を活発にする働きがある生薬のこと

山薬(サンヤク)とは滋養強壮作用があり、胃を活発にする働きがある生薬のこと
山薬(サンヤク)は、ヤマイモの根を乾燥させた生薬です。
概要は下記の通りです。
山薬(サンヤク)の概要について
生薬名 | 山薬(サンヤク) |
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学名 | Dioscoreae Rhizoma |
基原 | ヤマノイモ Dioscorea japonica Thunberg 又はナガイモ Dioscorea batatas Decaisneヤマノイモ科 根茎 |
薬用部位 | 根茎 |
産地 | 中国 、日本 |
主要成分 | ・多糖類:dioscoran A ~ F, dioscoreamucilage B ・allantoin ・デンプン ・糖タンパク質 ・アミノ酸 |
主な薬効 | ・唾液や胃液の分泌を促進 ・滋養強壮作用 ・胃腸虚弱や下痢 ・中年以後の足腰の弱り ・倦怠感頻尿、夜尿 ・精力減退 ・糖尿病の体質改善 |
山薬(サンヤク)の主要成分
山薬(サンヤク)には、以下のような成分が含まれています。
- 多糖類:dioscoran A ~ F, dioscoreamucilage B
- allantoin
- デンプン
- 糖タンパク質
- アミノ酸
山薬(サンヤク)に含まれる多糖類は、粘りがあり胃腸の粘膜を保護する働きがあるとされています。
また、デンプンは、体のエネルギー源として、体力の維持に役立ちます。
山薬(サンヤク)の特徴
山薬(サンヤク)には性味と呼ばれる2つの独特の作用があり、以下のような効果があります。
性味と効果
- 甘味:血の巡りをサポートし、筋肉の緊張や痛みを緩和する
- 微温:水分を補い、炎症を鎮めて毒素の排出をうながす
山薬(サンヤク)は、甘味と微温という2つの性質を持ち合わせることで、体を温めながら巡りを良くする働きがあります。
生薬における甘味は”甘い味”という意味ではありません。
甘味のある生薬には、生薬同士の愛称を整える働きや滋養の作用があるとされています。
山薬(サンヤク)の効能

山薬(サンヤク)の効能
山薬(サンヤク)のおもな効能は、以下の5つといわれています。
- 滋養強壮効果が期待できる
- 胃腸の機能をサポートする
- 骨や筋肉を強化し、体を丈夫にする
- 呼吸器の働きを助ける
- 精力の衰えや物忘れをサポートする
以下で詳しく説明します。
効果1.滋養強壮効果が期待できる
山薬(サンヤク)は体力をつけ、弱った体を回復させる働きがあるとされています。
とくに、免疫力やエネルギーが低下している状態を改善し、長引く病気や症状の回復を助ける効果が期待されます。
効果2.胃腸の機能をサポートする
山薬(サンヤク)は消化を助け、胃腸を健やかに保つとされています。
下痢を止める作用や、消化酵素であるジアスターゼを多く含むことから、消化吸収をよくする働きがあるといわれています。
研究では、マウスにヤマイモを含む食事を21日間与えたところ、小腸の消化酵素のバランスが調整されることが示唆されました。
このことからヤマイモには、腸の負担を軽減し、腸内環境を整える作用があるとされています。
効果3.骨や筋肉を強化し、体を丈夫にする
山薬(サンヤク)は、骨や筋肉を強化して体全体を丈夫にする効果が期待されています。
とくに中高年以上の方の足腰の健康をサポートするのに役立つとされてきました。
また、胃腸を健やかに保ち、呼吸を助け、腎臓の働きを強化し、肝臓の健康を支えるなど、体の主要な機能を幅広くサポートすると考えられています。
効果4.呼吸器の働きを助ける
山薬(サンヤク)は痰を取り除き、肺の負担を軽減する作用があるとされています。
そのため、慢性的な咳や呼吸器のトラブルの緩和にも役立つ可能性があります。
効果5.精力の衰えや物忘れをサポートする
山薬(サンヤク)は、精力の衰えや物忘れを改善するといわれています。
研究では、山薬(サンヤク)に含まれるジオスゲニンは、認知機能を高める効果があると示唆されました。
また、精神を安定させ、やる気や集中力を維持する助けにもなるとされています。
山薬(サンヤク)の副作用は、皮ふ症状、胃腸トラブル

山薬(サンヤク)の副作用は、皮ふ症状、胃腸トラブル
山薬(サンヤク)は、体質や摂取量によって副作用が生じることがあります。
山薬(サンヤク)のおもな副作用として以下のような症状が報告されています。
- 発疹、発赤
- かゆみ
- 食欲不振
- 胃部不快感
- 腹痛
使用上の注意点
以下の方は、使用を控えるか、医師や薬剤師に相談のうえ服用してください。
- 病気の治療を受けている方や妊婦、または妊娠している可能性のある方
- 胃腸が弱く、下痢をしやすい方
- アレルギーがある方
山薬(サンヤク)の原料であるヤマイモは、厚生労働省により「食品衛生法で表示義務のあるアレルギー物質」に指定されています。
ヤマイモにアレルギーがある方は、服用前に必ず医師や薬剤師に相談してください。
山薬(サンヤク)を使用しないほうがよい場合
以下のような場合は、山薬(サンヤク)の使用を控えることをおすすめします。
- 炎症性の下痢
- 便が硬い
- 山薬を多量に摂取して胸の詰まり感、ゲップ、胃の不快感がある
- お腹が張っている
胃腸の機能が弱っている場合には、山薬(サンヤク)の性質が消化をさらに滞らせる可能性があるため、服用を控えたほうがよいでしょう。
山薬(サンヤク)と山芋の違い:山薬(サンヤク)は乾燥させた山芋の根茎を用いた生薬

山薬(サンヤク)と山芋の違い:山薬(サンヤク)は乾燥させた山芋の根茎を用いた生薬
山薬(サンヤク) | 山芋 |
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山で採れる薬効のあるものという意味で、古くから滋養強壮効果が認められていたことを示す。 | 「山のうなぎ」と称されるほど精力増強にすぐれた食材として知られる。 |
ヤマノイモ科のヤマノイモ、またはナガイモの根茎を皮を除いて乾燥させたものを指す。 | 食材として美味しく食せるヤマノイモ全般を指す。 |
山薬として使われるヤマノイモ科のヤマノイモと、ヤマノイモ科のナガイモにおける違いは原産国が異なることです。
これにより、風味や栄養価が異なります。
ヤマノイモ科のヤマノイモ:原産国は日本であり、自然薯とも呼ばれている。
ヤマノイモ科のナガイモ:原産国は中国であり、栄養価はヤマノイモ科のヤマノイモの方が高い。
ヤマノイモ
ヤマノイモは、自然薯(じねんじょ)や、薯蕷(しょよ)とも呼ばれ、野山に自生する貴重な食材です。
粘りが強く、栄養価も高いため、滋養強壮や体力回復にすぐれているとされています。
ナガイモ
ナガイモは、長芋や大和芋など品種が豊富で、自然薯に比べて栽培が容易なため入手しやすいのが特徴です。
なお、山芋は消化酵素のジアスターゼが多く含まれているため、胃腸の働きを助ける働きがあるとされます。
山薬(サンヤク)が含まれる代表的な漢方

山薬(サンヤク)が含まれる代表的な漢方
山薬(サンヤク)は、多くの漢方薬に配合されており、代表的な漢方薬は下記の3つです。
- 八味地黄丸(ハチミジオウガン)
- 牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)
- 参苓白朮散(ジンレイビャクジュツサン)
それぞれの漢方薬は、山薬(サンヤク)の特徴を活かしながら、ほかの生薬との組み合わせによって、さまざまな効果を発揮します。
八味地黄丸(ハチミジオウガン):疲労感や老化をケアする漢方
八味地黄丸(ハチミジオウガン)は、加齢や老化にともなう不調をケアする漢方薬です。
構成生薬
地黄(ジオウ)、山茱萸(サンシュユ)、山薬(サンヤク)、沢瀉(タクシャ)、茯苓(ブクリョウ)、牡丹皮(ボタンピ)、桂枝(ケイシ)、附子(ブシ)
効能
- 体力の回復
- 疲労感、冷えの緩和
- 腰痛、足腰の衰えのケア
- 加齢にともなう頻尿、夜間尿、むくみなどのサポート
- 降圧効果
おすすめな人
- 年齢とともに体力が落ち、疲れやすい人
- 足腰が弱く、冷え性や腰痛がある人
- 夜間にトイレが近い、またはむくみが気になる人
副作用
- 湿疹、肌のかゆみ
- 食欲不振
- 胃の不快感
- 腹痛
- 下痢
- 動悸
- のぼせ
- 唇や下のしびれ
副作用が出た場合は服用を中止し、医師、薬剤師に相談してください。
参考:日東医誌 | 冷え・痛みの治療に伴う八味地黄丸の緩やかな降圧薬減量効果 | Vol.72 No.4, 368-376, 2021.
牛車腎気丸(ゴシャジンキガン):腰痛やしびれに効果が期待できる漢方
牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)は、八味地黄丸(ハチミジオウガン)に牛膝(ゴシツ)と車前子(シャゼンシ)を加えた漢方で、腰痛やしびれ、むくみの改善が期待される漢方薬です。
構成生薬
地黄(ジオウ)、山茱萸(サンシュユ)、山薬(サンヤク)、沢瀉(タクシャ)、茯苓(ブクリョウ)、牡丹皮(ボタンピ)、桂枝(ケイシ)、附子(ブシ)、牛膝(ゴシツ)、車前子(シャゼンシ)
効能
- 腰痛、足のしびれの緩和
- むくみ、尿量減少の改善
- 手足の冷えやほてりの緩和
- 腰から下の運動機能のサポート(転びやすい、すり足歩行など)
- 泌尿生殖器の機能サポート(男性:前立腺肥大、女性:尿失禁・膀胱炎など)
おすすめな人
- 加齢や病気にともなう運動機能の衰えを感じる人
- 手足の冷えやしびれが気になる人
- 尿トラブルやむくみで困っている人
副作用
- 間質性肺炎
- 肝機能障害
- 黄疸
- 発疹、発赤、かゆみ
- 食欲不振
- 胃部不快感
- 悪心
- 嘔吐
- 腹部膨満感
- 腹痛
- 下痢
- 便秘
- 心悸亢進
- のぼせ
- 舌のしびれ
注意点
小児は服用前に必ず医師や薬剤師に相談し、慎重に使用してください。
最近では、牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)は、抗がん剤治療の副作用である手足のしびれの改善に使用されることが増えています。
また、糖尿病による末梢神経障害の治療や予防にも効果が期待されており、近年の研究で有効性が示唆されています。
参考:名城大学特設サイト「第65回 漢方処方解説(30)牛車腎気丸」
参苓白朮散(ジンレイビャクジュツサン):胃腸を整え、体力を回復する漢方
参苓白朮散(ジンレイビャクジュツサン)は、胃腸の働きを整え、体力回復をサポートする漢方薬です。
構成生薬
人参(ニンジン)、山薬(サンヤク)、白朮(ビャクジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、薏苡仁(ヨクイニン)、白扁豆(ハクヘントウ)、蓮肉(レンニク)、桔梗(キキョウ)、縮砂(シュクシャ)、甘草(カンゾウ)
期待される効能
- 胃腸機能の調整
- 体力の増強
- 下痢を止める
適応症状
- 食欲不振
- 慢性下痢
- 産後の体力低下
- 疲労倦怠
- 消化不良
- 慢性胃腸炎
おすすめな人
- 体力が虚弱な人
- 胃腸が弱い人
- 痩せて顔色が悪い人
- 食欲がなく下痢が続く人
副作用
- 偽アルドステロン症(低カリウム血症、むくみ、血圧上昇、体重増加)
- ミオパシー(脱力感、四肢のしびれ・麻痺)
- 発疹・蕁麻疹
副作用が出た場合は服用を中止し、医師、薬剤師に相談してください。
山薬(サンヤク)は、滋養強壮と胃腸の働きを整える生薬

山薬(サンヤク)は、滋養強壮と胃腸の働きを整える生薬
山薬(サンヤク)は、胃腸の働きを整え、体力を回復させる効果が期待される生薬です。
おもな効能は以下のとおりです。
- 消化酵素のジアスターゼを含み、胃腸機能をサポート
- 疲労回復を助ける
- 体力の維持と精神面の健康をサポート
体力低下や胃腸の不調でお悩みの方は、医師や薬剤師に相談のうえ、山薬(サンヤク)を含む漢方薬の服用を検討してみてはいかがでしょうか。