釣藤鈎(チョウトウコウ)は、古くから知られる生薬の1つで、アカネ科のカギカズラと呼ばれる植物から作られます。
鈎状のトゲが特徴で、イライラや不安をやわらげる効果があるとされています。
今回は生薬として使われている釣藤鈎(チョウトウコウ)の特徴や効能、配合されている漢方薬について詳しく解説します。
釣藤鈎(チョウトウコウ)は血圧低下やストレスを緩和する生薬です。
この記事では釣藤鈎(チョウトウコウ)の特徴や効能、漢方薬について解説します。
釣藤鈎(チョウトウコウ)とは神経の興奮を静める効果がある生薬

釣藤鈎(チョウトウコウ)とは神経の興奮を静める効果がある生薬
釣藤鈎(チョウトウコウ)は、血圧を下げたり、神経の高ぶりを抑えたりといった効果が期待されています。
千葉県では絶滅危惧種に指定されるほど、希少な植物としても知られています。
釣藤鈎(チョウトウコウ)の概要は以下の通りです。
生薬名 | 釣藤鈎(チョウトウコウ)または釣藤鉤 |
---|---|
学名 | Uncaria rhynchophylla |
薬用部位 | 茎の鈎状の部分 |
産地 | 中国南部、日本の南紀、山陽、四国、九州などの温暖な山地 |
主要成分 | ・アルカロイドのリンコフィリン ・イソリンコフィリン ・コリノキセイン ・ヒルスチンなど |
主な薬効 | ・精神安定、セロトニン調節作用 ・脳細胞保護作用 ・降圧作用 ・高血圧に伴う随伴症状軽減作用 |
釣藤鈎(チョウトウコウ)が使われている漢方である釣藤散(チョウトウサン)は、脳血管障害によって起こる学習機能障害を改善することも報告されています。
また、抗うつ作用もあるとされています。
釣藤鈎(チョウトウコウ)の主要成分
釣藤鈎(チョウトウコウ)の主要成分はリンコフィリンやイソリンコフィリンです。
その他にも、以下のような成分を含んでいます。
- コリノキセイン
- ヒルスチン
- ポリフェノール
- ウンカル酸
これらの成分はアルツハイマー病、パーキンソン病、うつ病などにおける神経保護効果があるとされています。
釣藤鈎(チョウトウコウ)の特徴
釣藤鈎(チョウトウコウ)は、アカネ科のカギカズラと呼ばれる植物の鉤や茎部分を乾燥して生薬にしたものです。
特徴的な鉤を持つことから、「ネコヅメカズラ」や「カラスノカギズル」とも呼ばれます。
カギカズラの主な薬用成分であるリンコフィリンやヒルスチンは、枝の先端部にいくほど多く含まれています。
また鉤だけでなく、茎も薬用成分の含有率が高いため、鉤や茎の部分が薬用として使われています。
釣藤鈎(チョウトウコウ)は、東洋医学において味を甘、性を微寒とする生薬です。それぞれ以下のような特徴があるとされています。
性味と効果
- 甘:養分を補い、胃腸の働きを調整し、痛みをやわらげる
- 微寒:体を冷やす性質がある
釣藤鈎(チョウトウコウ)の効能

釣藤鈎(チョウトウコウ)の効能
釣藤鈎(チョウトウコウ)には、リンコフィリンやヒルスチンが含まれています。
これらの成分は、神経過敏や不眠、高血圧に伴う頭痛、肩こり、認知症などに効果があるとされています。
しかし長時間煎じると効果が減少するとも言われており、繊細な生薬でもあるようです。
釣藤鈎(チョウトウコウ)の主な効能は以下の4つとされています。
- てんかんなどの痙攣を緩和
- セロトニン作用によりストレス軽減をサポート
- 高血圧、それに伴う症状を緩和
- アルツハイマーの症状緩和に作用
それぞれ詳しく解説します。
てんかんなどの痙攣を緩和
東洋医学では、釣藤鈎(チョウトウコウ)は熄風薬(そくふうやく)に使われる生薬として活躍してきました。
熄風薬(そくふうやく)とは、体のふらつきやめまい、痙攣などを鎮める効果が期待できるものです。
釣藤鈎(チョウトウコウ)は、ふらつきや痙攣を軽減する作用があるとされており、古くから熄風剤(そくふうざい)として活用されています。
セロトニン作用によりストレス軽減をサポート
釣藤鈎(チョウトウコウ)は、セロトニン神経系の働きを活発にし、神経の興奮や緊張をやわらげ、ストレス軽減に効果があるとされています。
「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンが不足することにより、日々のストレスに敏感になりやすく、自律神経が乱れてしまうことがあります。
最近の研究において、セロトニン不足によって、うつ病のリスクが高くなることも示唆されています。
血圧を下げるサポート
釣藤鈎(チョウトウコウ)の主要成分の1つであるイソリンコフィリンには、血管を拡張して血圧低下を助ける働きがあります。
漢方薬では、釣藤散(チョウトウサン)や七物降下湯(シチモツコウカトウ)といった、高血圧に効果が期待できる漢方の、主成分として使用されています。
アルツハイマー病の症状緩和をサポート
釣藤鈎(チョウトウコウ)には、アルツハイマー病の周辺症状である易怒性、幻覚や妄想、暴力や暴言といった行動を抑制する働きもあるとされています。
釣藤鈎(チョウトウコウ)は、アルツハイマー病の原因とされるアミロイドβタンパク質を減らす作用があると報告されており、今後の研究次第ではさらに広い活用が期待されています。
釣藤鈎(チョウトウコウ)の過剰摂取には発がん性リスクがある

釣藤鈎(チョウトウコウ)の過剰摂取には発がん性リスクがある
2021年の研究において、釣藤鈎(チョウトウコウ)に含まれているヒルステインやイソコリノキセインなどの成分には、発がん性リスクがあるとされました。
そのため、釣藤鈎(チョウトウコウ)を必要量以上を服用する場合には医師へ相談することをおすすめします。
釣藤鈎(チョウトウコウ)と柴胡(サイコ)の違い:釣藤鈎(チョウトウコウ)は高血圧の症状に対して効果がある

釣藤鈎(チョウトウコウ)と柴胡(サイコ)の違い:
釣藤鈎(チョウトウコウ)は高血圧の症状に対して効果がある
釣藤鈎(チョウトウコウ)と似た効能を持つ生薬に柴胡(サイコ)があります。
この2つの生薬は、抑肝散(ヨクカンサン)という漢方に含まれており、いずれも神経興奮を緩和する効果があるとされています。
2つの生薬の違いについては以下の表の通りとなっており、効能の大きな違いは血圧を下げる効果があるかないかです。
項目 | 釣藤鈎(チョウトウコウ) | 柴胡(サイコ) |
---|---|---|
由来 | 釣鉤のような形 | 静岡県三島付近でよく採れるミシマサイコ |
成分 | ・リンコフィリン ・イソリンコフィリン ・ヒルスチン ・ヒルステインなど | ・サイコサポニン ・サイコゲニン ・フィトステロール類など |
効能 | ・精神安定、セロトニン調節作用 ・脳細胞保護作用 ・降圧作用 ・高血圧に伴う随伴症状軽減作用 | ・抗ストレス作用 ・中枢抑制作用 ・解熱鎮痛作用 ・抗炎症作用 ・肝疾患改善作用 |
副作用 | 過剰摂取による発がん性リスクあり | 過剰摂取による慢性肝毒性のリスクが増加 |
釣藤鈎(チョウトウコウ)が含まれる代表的な漢方

釣藤鈎(チョウトウコウ)が含まれる代表的な漢方
釣藤鈎(チョウトウコウ)は、降圧作用だけでなく認知症の周辺症状を緩和するなど、注目されている生薬です。
代表的な漢方は以下のものが挙げられます。
- 釣藤散(チョウトウサン)
- 抑肝散(ヨクカンサン)
- 七物降下湯(しちもつこうかとう)
それぞれ詳しく解説していきます。
釣藤散(チョウトウサン):自律神経のバランスを整えイライラをやわらげる漢方
釣藤散(チョウトウサン)は、緊張をほぐし、不安やイライラを抑えるとされる漢方です。
さらに、慢性頭痛からくる肩こりや目の充血などをやわらげる働きも見込めます。
構成生薬
釣藤鈎(チョウトウコウ)、橘皮(キッピ)、菊花(キッカ)、防風(ボウフウ)、麦門冬(バクモンドウ)、茯苓(ブクリョウ)、生姜(ショウキョウ)、甘草(カンゾウ)、石膏(セッコウ)
効能
- 自律神経を整え抑うつ症状や緊張をやわらげる
- 頭痛や頭痛からくる肩こり、背中の強張りをやわらげる
- 耳の奥の血流を良くしてめまいを緩和する
おすすめな人
- ストレスが溜まっていてイライラや不安がある方
- 慢性頭痛でめまいや肩こりがひどい方
- 高血圧の方
釣藤散は、近年さまざまな研究が進められており、特に、認知症や記憶障害などへの効果が期待されています。
抑肝散(ヨクカンサン):ストレスや不安からくる精神的な症状を緩和する漢方
抑肝散は、気の巡りを良くするとされており、小児の夜泣きの緩和にも使われてきました。
気の巡りを良くすることにより、ストレスの緩和にも効果があるとされています。
構成生薬
当帰(トウキ)、釣藤鈎(チョウトウコウ)、川芎(センキュウ)、朮(ジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、柴胡(サイコ)、甘草(カンゾウ)
効能
- 小児の夜泣きや神経過敏を緩和する
- ストレスや抑うつ症状からくる不眠や神経症の軽減をサポートする
- 更年期障害などの女性特有の症状をやわらげる
おすすめな人
- 神経が高ぶりイライラして怒りっぽくなったと感じている方
- 血の道症(更年期障害や月経障害によって起こる不眠や不安、興奮などの症状)がある方
- 子どもの夜泣きに悩んでいる方
抑肝散は釣藤散と同様に、認知症による怒りっぽさや幻覚、妄想などの周辺症状を緩和するとして活用されています。
七物降下湯(シチモツコウカトウ):高血圧に伴うのぼせや肩こり、頭重感に働きかける漢方
七物降下湯(シチモツコウカトウ)は、血虚(ケッキョ)と呼ばれる血が不足しているときに利用される四物湯(シモツトウ)の成分が含まれています。
そこに釣藤鈎(チョウトウコウ)、黄耆(オウギ)、黄柏(オウバク) を加えて作られた漢方です。
構成生薬
芍薬(シャクヤク)、当帰(トウキ)、黄耆(オウギ)、地黄(ジオウ)川芎(センキュウ)、釣藤鈎(チョウトウコウ)、黄柏(オウバク)
効能
- 降圧作用が期待できる
- 高血圧に伴う嘔気・嘔吐をやわらげる
- 高血圧に伴う肩こりや頭重感を緩和する
おすすめな人
- 血圧が高くて疲れやすい方
- 高血圧に伴う頭痛や肩こりに悩んでいる方
七物降下湯(シチモツコウカトウ)は、軽度の腎機能障害を伴う高血圧にも効果が期待できるとされています。
釣藤鈎(チョウトウコウ)は忙しい現代人の心と体をサポートする生薬

釣藤鈎(チョウトウコウ)は忙しい現代人の心と体をサポートする生薬
生薬として古くから使われている釣藤鈎(チョウトウコウ)は、カギカズラと呼ばれるアカネ科植物の鈎状の茎部分を利用しています。
釣藤鈎(チョウトウコウ)には、不安や抑うつ症状、興奮などを鎮める精神安定、セロトニン調節作用があるだけでなく、以下のような効能があります。
- 脳細胞保護作用による認知症の周辺症状をやわらげる
- 血圧の低下をサポートする
現代のストレス社会を力強く生き抜いていくために、これからも釣藤鈎(チョウトウコウ)は、現代社会で感じるストレスをやわらげる頼れる味方になってくれそうです。