杏仁といえば、杏仁豆腐を思い浮かべる方も多いでしょう。
しかし杏仁(キョウニン)は生薬としても優秀で、風邪症状や便秘の緩和、美容効果まで幅広い用途で重宝されています。
杏仁(キョウニン)を含む漢方薬と効能、杏仁(キョウニン)を美味しく食べる方法をご紹介します。
杏仁(キョウニン)とは咳止めや美肌効果がある生薬

杏仁(キョウニン)とは咳止めや美肌効果がある生薬
杏仁(キョウニン)の概要について
生薬名 | 杏仁(キョウニン) |
---|---|
学名 | Prunus armeniaca L. var. ansu Maximowicz |
基原 | Prunus armeniaca Linne ホンアンズ Prunus armeniaca Linne var. ansu Maximowicz アンズ Prunus sibirica Linne モウコアンズ バラ科 落葉中高木 |
薬用部位 | 種子 |
産地 | 中国、日本 |
主要成分 | ・アミグダリン ・加水分解酵素エムルシン ・ステロイド |
主な薬効 | ・咳止め効果 ・便秘改善効果 ・美肌効果 |
杏仁(キョウニン)はアンズの種子の核で、咳止めや美肌効果があるとされる生薬です。
種子から仁を取り出し、乾燥させたものが杏仁(キョウニン)となります。
生薬として使うときは「キョウニン」、菓子類など食品に用いる場合は「アンニン」と呼ばれます。
生薬としてはアミグダリン含有量が多い「キョウニン」が使われ、食品にはアミグダリン含有量が少ない「アンニン」が使われます。
「アンニン」は比較的安全に利用できますが、「キョウニン」は摂取量に注意が必要です。
生薬としての杏仁(キョウニン)の薬効は以下のとおりです。
- 咳止め
- 便秘改善効果
- 美肌効果
杏仁(キョウニン)の主要成分

杏仁(キョウニン)の主要成分
杏仁(キョウニン)の主要成分として、以下の3つの成分があります。
- アミグダリン
- 加水分解酵素エムルシン
- ステロイド
アミグダリンは、酸や酵素により加水分解されるとマンデロニトリルと糖に分解されます。
さらにマンデロニトリルは、ベンズアルデヒドと毒性の強い青酸(シアン化水素)になります。
杏仁(キョウニン)は鎮咳去痰薬に配合され、その作用はアミグダリンによるものとされています。
生薬の特徴
杏仁(キョウニン)には2つの性味があり、それぞれに特有の効果があります。
性味と効果
- 苦味:体に溜まった熱を取り除き、体温を調節する
- 辛味:血流を促進し、体を温める
杏仁(キョウニン)には咳を鎮める効果に加え、解熱作用があるとされており、発熱を伴う風邪症状の緩和に向いている生薬です。
また、最近の研究結果で杏仁に含まれている成分が、がんに対しての有用性を示唆しています。
参考:National Library of Medicine|Apricot Kernel: Bioactivity, Characterization, Applications, and Health Attributes | Published: 22 July 2022
杏仁(キョウニン)の効能

杏仁(キョウニン)の効能
杏仁(キョウニン)の効能とされているものは、以下の3つです。
- 咳止め効果
- 便秘改善効果
- 美肌効果
咳止めから美肌効果まで幅広い用途で用いられる杏仁(キョウニン)について、効能をそれぞれ解説します。
咳止め効果がある
杏仁(キョウニン)はうるおいを与える作用が強いとされており、とくに乾いた咳やのどの乾燥に対して効果的とされています。
そのため、杏仁(キョウニン)は喘息や咳症状の緩和を目的とした漢方である麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)や大青竜湯(ダイセイリュウトウ)などに配合されています。
便秘改善効果
杏仁(キョウニン)は便秘改善の効果もあるとされています。
杏仁(キョウニン)に30~50%含まれている脂肪油が、腸を刺激して便通を促すといわれています。
杏仁(キョウニン)は麻子仁丸(マシニンガン)や潤腸湯(ジュンチョウトウ)といった漢方に用いられ、硬い便に水分を含ませ排便を助ける作用が期待できます。
麻子仁丸(マシニンガン)や潤腸湯(ジュンチョウトウ)は、その優れた効能から妊娠中の便秘に一時的に用いられることもあります。
美肌効果がある
杏仁(キョウニン)は、美肌にも効果的とされる生薬です。
杏仁(キョウニン)には、肌にハリやうるおいを与えるとされる天然の保湿美容成分が豊富に含まれています。
美肌効果を目的とした杏仁(キョウニン)は、杏仁豆腐などのスイーツとして摂取される傾向があります。
また外用薬も有効で、杏仁だけから抽出した純度100%の美容オイルもあります。
杏仁と桃仁の違い

杏仁と桃仁の違い
杏仁(キョウニン)とよく似た生薬として桃仁(トウニン)がありますが、植物の由来はもとより成分や効能、副作用において違いがあります。
杏仁と桃仁の違い
杏仁 | 桃仁 | |
---|---|---|
由来 | アンズの種子 | モモの種子 |
成分 | ・アミグダリン ・加水分解酵素エムルシン ・ステロイド類 | ・アミグダリン(含有量は杏仁より少ない) ・エムルシン ・ステロール誘導体 |
効能 | 鎮咳去痰 | 便通、月経不順、月経痛の緩和 |
副作用 | 悪心・嘔吐、下痢、めまい、頭痛、瞳孔散大、心悸亢進、過呼吸、チアノーゼ、意識喪失、窒息性痙攣 | 食欲不振、胃部不快感、流産や早産のリスクがある |
桃仁(トウニン)は杏仁(キョウニン)よりも、アミグダリン含有量が少なく、副作用や効能において大きな違いがあります。
杏仁(キョウニン)の副作用:嘔吐やめまい、心悸亢進、過呼吸など

杏仁(キョウニン)の副作用:嘔吐やめまい、心悸亢進、過呼吸など
アミグダリンを含む杏仁(キョウニン)は咳止めとして有効とされていますが、多量に摂取すると以下のような副作用を引き起こすとされています。
- 悪心・嘔吐
- 下痢
- めまい・頭痛
- 瞳孔散大
- 心悸亢進
- 呼吸困難
- チアノーゼ
- 意識喪失
- 窒息性痙攣
アミグダリンは、消化管内で加水分解されて毒性の高い青酸(シアン化水素)が発生します。
杏仁(キョウニン)を過剰量摂取する場合にはシアン中毒のリスクがあるため、医師への相談が必要です。
杏仁(キョウニン)が含まれる代表的な漢方

杏仁(キョウニン)が含まれる代表的な漢方
杏仁(キョウニン)が含まれる代表的な漢方として以下の4つがあります。
- 麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)
- 大青竜湯(ダイセイリュウトウ)
- 麻子仁丸(マシニンガン)
- 潤腸湯(ジュンチョウトウ)
それぞれの生薬と効能を解説します。
麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ):喘息の改善を目的とした漢方
喘息の改善を目的としている場合は、麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)がおすすめです。
構成生薬
麻黄(マオウ)、杏仁(キョウニン)、甘草(カンゾウ)、石膏(セッコウ)
効能
- 気管支拡張作用
- 鎮咳去痰作用
おすすめな人
- ゼーゼーと音がする咳を緩和したい方
- 小児ぜんそく、気管支喘息にお悩みの方
- 小児マイコプラズマ肺炎を緩和したい方
服用の際は、むくみや高血圧症など、甘草(カンゾウ)による副作用に注意する必要があります。
甘草(カンゾウ)は全漢方薬の7割に配合されているため、服用の際は飲み合わせに注意する必要があります。
参考:Jstage | 小児マイコプラズマ肺炎の回復期に対する麻杏甘石湯の効果 | 20/4/1994/
大青竜湯(ダイセイリュウトウ):風邪症状の緩和する効果のある漢方
大青竜湯(ダイセイリュウトウ)は、発熱や風邪症状、鼻水やくしゃみなどの体調不良のときに用いられています。
構成生薬
石膏(セッコウ)、麻黄(マオウ)、杏仁(キョウニン)、桂皮(ケイヒ)、大棗(ナツメ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウガ)
効能
- 悪寒や発熱症状の緩和
- 関節痛の緩和
- アトピー性皮膚炎の緩和
大青竜湯(ダイセイリュウトウ)は、麻黄(マオウ)の配合量が多く胃への負担が大きいため、胃腸が弱い人は注意が必要です。
麻子仁丸(マシニンガン):習慣性便秘に効果のある漢方
麻子仁丸(マシニンガン)は、習慣性便秘に効果があるとされ、高齢者や虚弱体質の方でも服用できる漢方です。
構成生薬
大黄(ダイオウ)、枳実(キジツ)、杏仁(キョウニン)厚朴(コウボク)、芍薬(シャクヤク)、麻子仁(マシニン)
効能
- 硬い便の軟化
- 大腸の活動を活発にする
このように、麻子仁丸(マシニンガン)は腸をうるおして便をやわらかくする働きのある漢方薬です。
潤腸湯(ジュンチョウトウ):習慣性便秘に効果のある漢方
潤腸湯(ジュンチョウトウ)は麻子仁丸(マシニンガン)と同じく、乾燥性の硬い便でお悩みの方におすすめです。
構成生薬
地黄(ジオウ)、当帰(トウキ)、黄芩(オウゴン)、枳実(キジツ)、杏仁(キョウニン)、桃仁(トウニン)、麻子仁(マシニン)、厚朴(コウボク)、大黄(ダイオウ)、甘草(カンゾウ)
効能
- 便通の改善
- 腸に溜まったガスの解消
- 硬い便の軟化
この潤腸湯(ジュンチョウトウ)も、麻子仁丸(マシニンガン)と同様に高齢者や虚弱体質の方でも服用できる漢方とされています。
キョウニン水は咳止めに効果がある

キョウニン水は咳止めに効果がある
キョウニン水とは、採油後の杏仁を蒸留することで得られる医薬品(区分は劇薬)です。
咳止めや痰の切れに効果があるとされますが、過剰摂取は禁物です。
副作用として悪心・嘔吐、下痢、めまい、頭痛、瞳孔散大、心悸亢進、過呼吸、チアノーゼ、意識喪失、窒息性痙攣があるとされています。
妊娠または授乳中の方や他に薬などを使っている場合は、必ず担当の医師や薬剤師に相談しましょう。
杏仁を美味しく食べる方法

杏仁を美味しく食べる方法
生薬としての杏仁(キョウニン)を紹介してきましたが、ここでは食用(甜杏仁)として杏仁(キョウニン)を美味しく食べる方法をご紹介します。
- 杏仁豆腐
- 杏仁茶
食用としての杏仁の特徴と効果を紹介します。
杏仁豆腐は咳止めや喘息を緩和する
もともと、杏仁豆腐は咳や喘息の治療などを目的とした薬膳料理で、咳止めや喘息にも効果があるとされています。
杏仁豆腐の作り方は以下のとおりです。
材料
- 純杏仁粉…5g
- 牛乳…200g
- ゼラチン(顆粒)…6g
- クコの実…適量
作り方
- 鍋に水と杏仁粉を入れ、泡だて器でよく混ぜながら火にかけ約2分沸騰
- グラニュー糖と牛乳を加え、混ぜながら弱火で約1分沸騰
- 火からおろし、水でふやかしたゼラチンを加えてゼラチンが溶けるまで混ぜる
- 容器に流し、約30分冷蔵庫で冷やし固める。
上記の材料や手順で杏仁豆腐を作ることができるので、気になった方はお試しください。
杏仁茶はお通じの改善や咳を鎮める
杏仁茶とは、杏仁粉や杏仁霜などの杏仁パウダーをお湯や牛乳で溶いたものです。
杏仁茶の効能として、咳を鎮め、スムーズな排便を促す効果があるとされています。
好みに応じて、ハチミツを加えることで、さらに美味しく召し上がれます。
材料
- 牛乳…100ml
- 水…100ml
- 紅茶(ティーバッグ)…1パック
- 杏仁霜…10g
- 砂糖…5g
作り方
- 鍋に牛乳と水を入れて沸騰させる。
- 紅茶を加えて煮出す。
- 杏仁霜と砂糖を加え、よく混ぜる。
好みに応じて、ハチミツを加えても美味しく召し上がれます。
風邪症状の緩和から美容まで、幅広く活躍する漢方に用いられる杏仁(キョウニン)

風邪症状の緩和から美容まで、幅広く活躍する漢方に用いられる杏仁(キョウニン)
生薬に用いられる杏仁(キョウニン)はアンズの種子であり、日常生活で起こる数々の疾患をケアしてくれることからさまざまな漢方に配合されています。
おもな効能は以下のとおりです。
- 咳止め効果
- 便秘改善効果
- 美肌効果
杏仁(キョウニン)は、発熱や咳を伴う風邪症状から便秘の緩和まで、毎日の健康管理に役立つ生薬です。