遠志(オンジ)は、昔から漢方薬に使われてきた生薬のひとつで、体力を補い、加齢による物忘れを和らげる効果が期待されています。
特に、日々のストレスや疲れが溜まりやすい方には役立つ可能性があります。
本記事では、遠志(オンジ)が持つ効能や、含まれる代表的な漢方薬についてわかりやすく解説します。
遠志(オンジ)は強壮作用があり、咳を緩和する作用もある生薬

遠志(オンジ)は強壮作用があり、咳を緩和する作用もある生薬
遠志(オンジ)は、ヒメハギ科のイトヒメハギという植物の根、または根の皮を使用した生薬です。
特に、芯が除去された円筒状で肉厚のものが良質とされています。
最近の研究では、遠志(オンジ)に含まれる成分が、アルツハイマー病の神経細胞に与えるダメージを抑える可能性があることがわかってきました。
遠志(オンジ)の概要については以下の表の通りです。
遠志(オンジ)の概要について
生薬名 | 遠志(オンジ) |
---|---|
学名 | POLYGALAE RADIX |
基原 | イトヒメハギ (Polygala tenuifolia Willdenow)の根、根皮 |
薬用部位 | 中心の木部を抜き取った根 |
産地 | 中国 |
主要成分 | ・サポニン ・キサントン誘導体 ・糖類など |
主な薬効 | ・強壮作用 ・去痰作用 ・鎮静作用 |
遠志(オンジ)の主要成分
遠志(オンジ)には、以下のような成分が含まれています。
- 単糖類
- トリテルペノイド
- トリテルペン系サポニン
- フェニルプロパノイド
- キサントン類
- フラバノン
- ジヒドロフラボノールなど
遠志(オンジ)に含まれるサポニンという成分には、中枢抑制作用があるとされており、イライラや不安を落ち着かせる精神安定に効果が期待できる成分です。
遠志(オンジ)の特徴
遠志(オンジ)は、ヒメハギ科イトヒメハギの根を乾燥させた生薬で、サポニン配糖体などが含まれています。
オンジ(遠志)の漢方薬としての性質を表す「五気」「五味」では、温、苦、辛に分類され、特徴は以下の通りです。
- 温:体を温め血行を促進する
- 苦:熱を取り除き、余分な水分を除去する
- 辛:汗を出し気血の巡りを良くする
遠志(オンジ)の効能

遠志(オンジ)の効能
遠志(オンジ)には、おもに下記の作用があるとされています。
- 去痰作用
- 物忘れの改善を助ける作用
- 鎮静作用
以下で詳しく説明します。
痰を出しやすくする効果が期待できる
遠志(オンジ)は、去痰効果が期待できる生薬で、喀痰や咳嗽の改善に効果があるとされています。
また、抗炎症成分の働きを助ける効果も期待できます。
物忘れ改善をサポートする
遠志(オンジ)は、中年期以降に見られる軽い物忘れを改善する効果が期待されています。
ただし、これは正常な加齢に伴う記憶力の低下に対してであり、認知症そのものの予防や治療効果については明確な証拠がまだ十分に得られていません。
イライラを鎮め心を落ち着かせる効果が期待できる
遠志(オンジ)は、中国医学でも古くから使用されており、特にイライラや不安を鎮めるために使われてきました。
また、体の不調などを整える強壮作用もあるとされています。
遠志(オンジ)服用時の注意点:血液検査前には服用を控える

遠志(オンジ)服用時の注意点:血液検査前には服用を控える
遠志(オンジ)の服用中に血液検査を受けると、血糖値が一時的に低く計測される可能性があり、自身の正常な血糖値が計れません。
遠志(オンジ)を含む代表的な漢方薬としては、人参養栄湯(ニンジンエイヨウトウ)や加味帰脾湯(カミキヒトウ)、加味温胆湯(カミウンタントウ)などがあります。
これらを服用している方は、血液検査を受ける前に医師にその旨を伝え、適切な検査結果を得ることが重要です。
遠志(オンジ)とセネガの違い

遠志(オンジ)とセネガの違い
遠志(オンジ)と同じヒメハギ科の植物に、セネガというヒロハセネガの根を使った生薬があります。
2つの生薬には、去痰作用があるとされ効能などが似ています。以下2つの生薬の特徴を表にまとめました。
遠志(オンジ)とセネガの概要について
項目 | 遠志(オンジ) | セネガ |
---|---|---|
学名 | POLYGALAE RADIX | SENEGAE RADIX |
産地 | 中国 | カナダアメリカ東北部 |
薬用部位 | イトヒメハギの根(中心部を抜いたもの) | 根 |
効能 | ・鎮静作用 ・強壮作用 ・去痰作用 ・物忘れ改善サポート | ・去痰作用 ・鎮咳作用 |
含有成分 | ・サポニン ・キサントン誘導体など | ・トリテルペンサポニン ・脂肪油 ・サリチル酸メチルなど |
遠志(オンジ)とセネガは去痰作用があり、効能がよく似ています。
しかし遠志(オンジ)には、そのほかにも強壮作用や、高齢に伴い生じる物忘れ改善をサポートする効能も期待できます。
セネガは主に呼吸器系の健康に使用され、特に風邪や咳などの症状に効果的とされています。
遠志(オンジ)が含まれる代表的な漢方

遠志(オンジ)が含まれる代表的な漢方
遠志(オンジ)が含まれる代表的な漢方薬には以下のものがあります。
- 人参養栄湯(ニンジンエイヨウトウ)は健康長寿をサポートする漢方
- 加味帰脾湯(カミキヒトウ)は15種類の生薬で心身の疲労回復を助ける漢方
- 加味温胆湯(カミウンタントウ)は胃腸の虚弱、不眠を緩和する漢方
それぞれ詳しく解説していきます。
人参養栄湯(ニンジンエイヨウトウ)は健康長寿をサポートする漢方
人参栄養湯(ニンジンエイヨウトウ)は、東洋医学では「気」を補う漢方薬として知られています。
「気」とは、体内を流れるエネルギーのようなもので、これを補うことで活力を補充し、全身の健康を整える効果が期待できます。
構成生薬
人参(ニンジン)、地黄(ジオウ)、当帰(トウキ)、白朮(ビャクジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、遠志(オンジ)、陳皮(チンピ)、黄耆(オウギ)、甘草(カンゾウ)、五味子(ゴミシ)
効能
- 筋力の低下(フレイル)
- 過活動膀胱
- 食欲不振
- 全身の倦怠感
- 呼吸器症状
- 気分の落ち込み
- 不眠
おすすめな人
- 高齢で筋力が低下している方
- 骨盤底筋群が弱っている方
- 食欲が出ない方
- 疲れやすい方
- 疲労感や不安感がある方
- 貧血気味の方
加味帰脾湯(カミキヒトウ)は15種類の生薬で心身の疲労回復を助ける漢方
15種類の生薬を組み合わせて作られた漢方薬です。
古くから、心身の調和を整え、不眠や不安感、食欲不振などの症状を改善する目的で用いられています。
最近では、認知症の改善に対する効果も期待できます。
構成生薬
人参(ニンジン)、茯苓(ブクリョウ)、当帰(トウキ)、甘草(カンゾウ)、大棗(タイソウ)、白朮(ビャクジュツ)、黄耆(オウギ)、遠志(オンジ)、木香(モッコウ)、生姜(ショウキョウ)、竜眼肉(リュウガンニク)、酸棗仁(サンソウニン)柴胡(サイコ)、山梔子(サンシシ)、牡丹皮(ボタンピ)
効能
- 胃弱
- 精神的なストレスによるイライラや不安
- 貧血
- 不眠
- 心身ともの疲労
おすすめな人
- 胃腸の調子が良くない方
- ストレスからくる不安やイライラがある方
- 不眠で悩んでいる方
- 心身ともに疲れが溜まっている方
- 貧血気味の方
加味温胆湯(カミウンタントウ)は胃腸の虚弱、不眠を緩和する漢方
加味温胆湯(カミウンタントウ)は、古くから不眠や神経症などの症状の緩和を目的として用いられてきた漢方薬です。
適した処方として知られています。
近年の研究により、加味温胆湯にはアルツハイマー病の認知機能の低下を緩和する働きも期待できます。
構成生薬
半夏(ハンゲ)、茯苓(ブクリョウ)、陳皮(チンピ)、竹茹(チクジョ)、乾生姜(カンショウガ)、枳実(キジツ)、甘草(カンゾウ)、遠志(オンジ)、玄参(ゲンジン)、人参(ニンジン)、地黄(ジオウ)、酸棗仁(サンソウニン)、大棗(タイソウ)
効能
- 胃弱
- うつ症状
- 不眠
- 倦怠感
- イライラ
おすすめな人
- 胃腸の調子が良くない方
- 日常ですぐにイライラしてしまう方
- 不眠で悩んでいる方
- 体のだるさが取れない方
遠志(オンジ)は強壮作用があり健康的に長生きするために欠かせない生薬

遠志(オンジ)は強壮作用があり健康的に長生きするために欠かせない生薬
遠志(オンジ)は、生きていくための活力が得られる強壮作用、そして年齢に伴う物忘れを緩和する働きが期待されている生薬です。
おもな効能は以下の通りです。
- エネルギーを取り戻す強壮作用
- 痰や咳を和らげる去痰作用
- 加齢に伴う正常な物忘れ改善のサポート
- イライラや不安などを緩和する鎮静作用
最近元気が出ない、疲れやすい、または咳や痰が絡むとお悩みの方は、医師や薬剤師に相談のうえ、遠志(オンジ)を検討してみてはいかがでしょうか。